中小企業のコスト病というものは、困った病気

ある会社から最もコストが安くつくれるように生産のアドバイスをくれないかと相談がありました。

話を聞くと、数十年と材料費の節減に取り組んできたがどうすることもできない状況であると。

エンジニア数人からは技術的には限界に近く、これ以上のバラつきを抑えるとかえってコスト高になるところまで来ているという。

このことを理解できない社長は効率、合理化、コスト以外は何も考えない傾向が強いです。効率、合理化、コストだけで年々増加する人件費と経費を永久に賄い続けることできません。

生産効率は、初めのうちは効果が上がっても、だんだんその効果が小さくなり、しまいには、生産効率を上げるための投資が、生産効率向上で賄えなくなります。一方、人件費と経費は確実に毎年上昇し続けます。

増加する人件費と経費を賄って、なおかつ利益を出すためには、新事業開発・商品開発が絶対に必要です。

コスト病に蝕まれる中小企業

大企業はコストしか考えない、中小企業もコストしか考えない。同じ土俵で相撲を取って自滅する会社は多いです。

例えば建売住宅、建築設備メーカーなど、コスト病にかかり、欠品商品を売り出してクレームが発生し、月商の数ヶ月分ものクレーム処理費がかかり一時は倒産の噂さえ囁かれた有名企業は例を挙げればきりがありません。

お客さんは商品に対して完全な機能を要求します。例え完全でないまでも少なくとも、今までの商品より優れた機能を要求するものです。

特に中小企業は、価格は他社より高くても、必ず自らの商品に責任を持ち、顧客のために誠心奉仕しなければ勝てません。

分かりやすいのは外食産業のコスト病です。一食分当たりのコストを下げて、利益を多くしようとする経営者は多くいます。

その結果、「相対的に高くてまずい」ものになって、お客様を掴むことができず、当然のこととして業績が上がりません。

一部の誠実で賢明な企業が、原価は高く、おいしいものをお客さんに提供して高収益を上げています。それは一食当たりの収益は低くとも、売れる数が多いからです。

大企業の例としてユニクロは、「安かろう悪かろう」から「安くても品質は良い」へ変革を遂げましたが、品質が良いのはコストを抑える仕組みの上に成り立っています。

だったら、品質を良いものより安いものを先に提供して、利益を出した後に少しづつ還元すればよいじゃないかというようではダメです。

今の世の中、安くて悪いものを出した時点で市場から強制退場させられます。

中小企業は、ここを飛ばしてコスト病になり「安くて品質が悪い」ものを提供してしまいます。

あるコンサルタントが御社の原価比率が、業界平均より5%以上も高いから、これを引き下げましょうと提案してきたそうです。

それに対して、経営者は「他社よりも5%原料高だから良いものがつくれる。これがお客さんに喜ばれて、高収益をあげさせてもらっている」と答えたそうです。

これこそ真の中小企業の経営者の姿です。

コスト病はトップダウンNG

仮に生産効率化やコスト削減をやるのであれば、トップダウンで生産効率化やコスト削減する項目を決めてしまうことはNGです。

だいたい経営が苦しく焦っているときほど、こうなりがちです。

例えば生産管理ツールを「もっと安いものに見直せ」と言って、別のツールに切り替えた結果、生産効率が下がってしまったなど。

このように現場で必要なものを理解せずに、勝手にコスト削減するものを決めてしまうのは問題です。実際、この会社に必要だったのは、ツールを切り替えることでなく、外注時の紙ベースの受発注だったり、まずは現場に聞けばすんなりコスト削減が進むケースもよくあります。

だからといって、ボトムアップでコスト削減は難しい側面があります。社長が現場に行って、いきなり「明日までに使っていない費用リスト化して」と言ったところで、大抵は「そんなものありません。全部必要です」となるに決まっています。

使っていない費用を申告しても、自分にメリットがないし、一方で削減がうまくいかないと問い詰められるので、トップダウン、ボトムアップ共にとても難しいです。

やはり望ましいアプローチは、きちんと担当者を決めた上で、コスト削減をプロジェクト化することではないかと思います。

コスト病に蝕まれないためには

コスト病にかかるとこれ以外のことは考えられなくなります。効率を上げればコストが下がると思い込み、企業活動すべてにおいて合理化を図るべきであると。

しかし、本当の意味での生産性向上は、顧客の要求する商品またはサービスを行うことにより、第一に高値で売れ、その上、売上数量が増大することによって、高収益を実現することに他ならないことを忘れてはいけません。

コスト病の恐ろしさは、市場の変化も顧客の要求も眼中にはなく、ひたすら効率、コスト、品質だけを追い続けます。

効率がいかに良かろうと、コストが安かろうと、品質が優れていようと、ただそれらだけでは、事業の斜陽化を防ぐ力は何もありません。

顧客の要求を満たしつつ、さらにその要求を満たし続けるために効率、コスト、品質を改善して変化し続けること、この順番を間違わないでください。

市場の変化も顧客の要求も考えてみたこともない経営者がいかに多いことか。効率主義を捨て顧客主義に徹することこそ、企業存続の基本条件です

顧客の要求が変わったときに、それが我社にどのような影響を及ぼすのか、を考えると現在のままではいけないことが痛感されるはずです。