カリスマ会長・社長の下で管理職が機能していない会社は多い。

ある優れたビジネスモデルで住宅を販売する会社がありました。この会社の社歴は長く、先人が苦労して積み上げてきたビジネスモデルや技術によって、業界での評価は高いものになっています。しかしその長い歴史故の弊害もありました。

その弊害のひとつが、明確な上下関係です。上職者の言うことは「絶対」であり、若手や中堅の社員が、年上の課長の考えや意見に異を唱えることは許されない社風になっていました。そして多くの管理者も、会長・社長の意向を忠実に実行するという行動様式に染まっていました。

上意下達に染まっていた管理者は、上意を受けて自らの考えを示すことできず、「自分で考えろ」と部下に丸投げし、部下は漠然とした課題を投げつけられたまま、一生懸命考えるも、「進捗はどうだ?」「あの件はどうなった?」と細かく追い立てられるだけ。部下は嫌気がさして、すっかり職場は冷え切っていました。

このような管理職は、目標を具体的に提示することができないだけでなく、何をどうすれば良いのか解っていないため、進捗状況の報告を求められれば、長い言葉や綺麗な書類で、「ごまかす」ことを覚えます。

そして、「ごまかし」の書類を延々とつくり、報告し続けることになります。つまり、社内に定期的な進捗管理の仕組みがない状態なのです。

さらに社内は、生産性の低い会議で溢れています。「社長の長い演説」、「書類を読み上げるだけの報告」、「何が決まったのか解らない終わり方」。先月決めたことが、忘れ去られます。

これらの結果、管理者が全く育っていません。彼らは、入社時から今日まで、課題の分析から目標の決定というプロセスに関わることはありませんでした。

強く叱責されても、「私の努力不足です。」と言うことしかできません。そこに責任感は生まれません。そして、管理者としての能力も経験も積み上がることはありませんでした。

管理者が機能しない会社のある2つの共通点

①組織としての目標達成のプロセス(課題解決力)が弱い

何か問題が起きると、社長や一部の優秀な社員が現状を確認し、解決策を考えます。それが繰り返されると、他の多くの社員は全く考えないようになります。

結果として、大部分の社員は上から降りてくる目標の重要性や意義など、知るすべはありません。平社員から管理者までもが、すべて作業員化します。
  
このように、組織としての目標達成のプロセス(課題解決力)を持たなくなると、個人の範囲を超えて、社内の至る所で多くの問題が起きていました。
特に、課題に対して表層的な「対処」が行われるだけで、根本的な仕組みの改善がされないため、忘れた頃に再発する、の繰り返しになります。
また、各部門、各現場での業務の改善が自発的に行われません。そのため、いたるところで昔からのやり方が続けられています。 

②人を責める文化

この段階で、管理者が機能しない会社には、もう一つの共通する現象が現れます。それは、「人を責める」という文化です。
目標を達成できない部門の管理者は責められます。会議の場で反省の弁が多くなります。そして、どうしてよいか解らず、その人は潰れていきます。

なぜやるのか、何をやるのか、どうやってやるのか、を考える力もないし、具体的に何も示されていないのです。それでも「がんばる」しかないと思い込みます。そして、時期をみて、管理者の変更が社内通達されます。彼は「能力不足」と判断されたのです。
 
2つの共通点の根本にあるものは同じです。仕組みとして、「組織の目標達成のプロセス」を構築するという発想が無いから、ある「個人」の問題解決力に頼るか、解決できない問題の原因は「人」と考えるのです。

管理職がしなければならない仕事とは

経営の情報は、経営層から管理者層、現場層(判断層と作業層)という上から下へという流れがあり、現場の情報は、主任や班長という判断層や作業層の現場スタッフから流れてきます。その上下の情報の中心にいるのが、管理者層です。

経営層からの情報から、現場層がより効率的に稼働できるようにすること。また、現場情報を、経営判断に必要な情報として整理して流します。その情報によって、経営層は、適切に判断を下すことができます。

例えば、経営層から「在庫回転率の向上に向けて、もっと工事現場の流れをスムーズにしたい」といった方針が示されたとします。

すると管理者は、工事現場の現状を踏まえて「ボトルネックになっている〇〇工程の生産性を改善する」、「梅雨時期の△△工程をAIによる天候予測で改善する」など、より踏み込んだ取り組みにブレークダウンして、それらを自らの言葉で展開する必要があります。

そして、管理者の言葉を受けて、各部門の実務現場は生産性の改善やAIの導入など方法を考えます。例えば、ある設備の導入、工程間のロスを是正する、材料や副資材の供給方法を変えるなど、具体的な対策を考えて実行します。

このように管理者には、上位の意向を受け、自らの組織にふさわしい取り組みテーマにブレークダウンして、「わが部門は何をすべきか」という方向性を示すことが求められます。

管理者として課題や方向性をきちんと示した後であれば、実務部隊が具体的に何をするかに関して管理者が関与する場合もあれば、部下に多くを委ねることもあります。

重要なのは、管理者が考えていることや狙いを自らの言葉で部下に伝えることです。それをせずに、ただ「何とかしろ」と漠然とした指示だけで、後はただ強烈な管理力を行使するというのでは組織は機能しません。

目標達成のプロセスには「方針管理」

①方針展開を考える

方針管理とは、経営者の経営方針を受け、それぞれの部門長が自らの部門の方針や取り組みに分解することです。

そして、それぞれの部門は、さらに下位の部門や個人の取り組みへと細かくブレークダウン(方針展開)していきます。

このように経営方針から個人の具体的活動まで、シームレスにつなげることで、経営の目標を達成させるための取り組みです。

②方針展開を部下に示す

自分なりに方針展開ができれば、その内容を説明してみることです。会社が示した方針に対し、「自部門の現状を踏まえると、私はこれがやるべき重要な取り組みだと考えている」と、自らの言葉で部下に説明して理解を得る必要があります。

もし、部下が別の意見を持っていて完全には管理者の方針に同意しなくても、内容が論理的に考えられているなら、管理者が「これで進めてくれ」と強く推しても、理由がしっかりしているだけに部下の不満は減らせます。

おわりに

ここまでは、少し教科書的な話でしたが、以下の柳井氏のことばの意味を考えてみたいと思います。

世界のユニクロ
写真:NewsPicks「世界のユニクロ」より

人は、何か困難なことに直面した時、「目標が高すぎる」「無理なことを言ってなんになる」など出来ない理由や言い訳を探します。その時の思考は「どうやったらできるだろうか」から「どうやったら逃げられるだろうか」という思考に変わっていきます。

冒頭で挙げた「ごまかし」の報告書も、この逃げの思考です。

当然、逃げの思考では、新しいアイディアが浮かぶことはありませんし、行動にパワーも湧いてきません。そこには、覚悟がないのです。

人は「なにがなんでも絶対に成果につなげる」という確固たる意志があるときのみ、アイディアと行動力を得ることができます。

それが解っている経営者は、『逃げる』という選択肢が浮かばないように、社内に仕掛けをします。

約束事は、すべて文章で伝えられ、さらに全員に対し説明をします。目標もその行動計画もすべて書面化されています。担当名も記してあります。そして、それを全社員が知っています。また、誰かに仕事を依頼する時には、期限を明確にします。

その結果、社内に規律と緊張感が保たれます。また、依頼したことや計画が予定通りに進みます。そして、進捗を適宜確認し、遅れている社員をサポートします。次の行動を明確にして、勇気を持てるように知恵を授け、言葉をかけます。

このような環境で、その会社の社員は、厳しい仕事に対し、前向きに取り組むことを続けます。逃げるという選択肢はありません。だから社員はそれに覚悟を持って、集中します。その結果、会社は早いスピードで変化し、市場で勝ち残っていくことができるのです。