若手スタッフ(技術職)が会社を見切る理由

少子高齢化による労働人口減少を背景に、特に若手人材の採用・定着が最も重要な経営課題の一つになりました。

ところが、せっかく採用した人材が定着しないという悩みを抱える企業は非常に多く、

どの会社も「人材」は「人財」として考えている割には、離職率が高かったり、それを改善しようとしなかったり、そもそも改善に取り組んでいない会社が多くあります。

また、若手が辞める根本原因を把握せずに、人事コンサルに丸投げしたあげく、「まずは研修制度や教育体制を充実させましょう」とカルキュラム製作に何百万もかけて、そのそもそもの原因は何も解決していないということを沢山見てきました。

特に中小零細企業においては、きちんとした研修制度や教育体制がなく、OJTのみという場合があります。そのため人材不足により、学ぶための時間がとれず、人材育成につながらないといった悪循環に陥っているケースも少なくありません。

若手スタッフ(技術職)が会社を見切る理由

若手が辞める会社の特徴をまとめると以下のような内容ではないでしょうか。

  • 仕事が自分にあわなかった
  • いちいち上司への確認が必要
  • 保守的でチャレンジ精神が認められない
  • 将来性が見えない
  • 人間関係が良くない
  • 「若手」というだけで権限を与えられない
  • 評価基準が曖昧
  • そもそも労働環境がブラック

また、大企業のトヨタでさえ若手技術者の退職に悩んでいます。

若いエンジニアが辞めているということに関して、本当に役員としても申し訳ないと思います。その理由を聞いてみると、「こんなはずじゃなかった」というコメントがあります。「自分で手を動かして開発の仕事がしたい」、「ソフトを自分でつくりたい」、「ハードを自分で設計したい」と考えているにもかかわらず、トヨタでは「調整業務、会議が多い」、「自分の時間がなかなかない」、「このまま年をとると、自分はエンジニアとしてダメな人になってしまう」という不安が多くあるようです。

トヨタを離れてどこにいくのかを見ると、スタートアップの会社が多いです。そこでは、一人ひとりに裁量権が大変大きく持たされているようで、自由に自分の意見で、自分の開発を自分の手でできるということのようです。(後略)

出所:「ボスになるな リーダーになれ トヨタ春交渉2020 第2回」、『トヨタイムズ』

このような状況に対応するためには、賃金、福利厚生、就業条件などの見直しなどのハード面や成長実感、やりがいなどのソフト面の両面からのアプローチが考えられます。

トヨタのような大会社であれば、ハード面は中小企業に比べて充実しているので、それでもこのような離職があるのは、ソフト面の影響が大きいと言えます。

このことは「ハーツバーグの動機づけ理論」で明らかにされたように、ハード面の取り組み効果には限界があることが分かっています。

人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなくて、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるとする考え方。

「ハーツバーグの動機づけ理論」

特に技術職の方の多くは、満足度≒成長実感となるため、どのように成長実感を持ってもらうかが退職を防ぐことになります。

若手は成長実感がなければ辞める

過去の働き方の調査結果から、「働くことを通じた成長を重要だと感じている人」の割合が高くても、実際は「働くことを通じた成長を実感できている人」の割合は半数も満たないことが明らかになっています。

どんな技術職でも、多くの人は成長実感を欲しているにも拘わらず、「石の上にも3年」といって我慢させようとする40代、50代の言うことは聞いてはいけません。

意味のない仕事を3年間やったからといって、それ相応の経験ができているとは限りません。

昨今の若者は、自分が成長できる仕事(職場)かどうかで会社を選ぶ傾向が強まっています。よって、彼らを定着させるためにはどうすればよいのか。

究極をいえば、それは「未来への可能性」です。彼らは自己実現を果たし、自分の幸せはもちろんのこと、周りの幸せを叶えたい、そして社会的影響力を発揮したいと考えています。

にも拘わらず、「昭和時代のマネジメント」を続けている会社は間違いなく敬遠されるし、すぐに見切りをつけられるでしょう。

そもそも「この会社に学ぶことはない」と見切りをつけるような浅い知識の会社や上司だったことを問題視するべきでしょう。

適度なコミュニケーションがなければ辞める

離職を助長する一番の原因がコミュニケーションの不足であると言われています。「成長実感」や「使命感」を感じさせるにも、相互の対話が必須であることは言うまでもありません。

上司と部下の対話を制度的に実施する「1on1ミーティング」を導入する企業も増えてきました。このような仕組みを使い、制度として取り組んでいくことで、相互の対話を促進して、人材が定着する組織風土づくりをするべきです。

上司や先輩が意識的に若手社員とコミュニケーションをとっていくような風土を作っていくことが離職防止の上でもっとも重要です。

そもそもマネジメントする気かない技術者を管理職にしている

若手以外の中堅技術者が離職する職場によくある傾向として、管理職が機能していないことが挙げられます。

技術者の多くは、自分自身で創り出すことを好み、どちらかといえばプレーヤー思考の方が多いです。だから、管理職になっても全くマネジメントをしない放任タイプと、過度に管理するタイプに大きく分かれる傾向があります。

そもそもマネジメントの定義は一つしかありえません。それは、「人をして何かを生み出させる」ことです。

部下やメンバーが協働することで、何か価値あるものを生み出させる。それがマネジメントの本来の役割です。

このような役割、つまり管理職にしかできない仕事が何かを知らないから、現場はどんどん忙しくて疲弊しています。

以前に、ある住宅会社の社長から「管理職が機能していない」との相談を受けたことがあります。創業者である社長のマンパワーで事業を拡大させて、社員も多くなってきたため中間管理職を任命しました。しかし、期待していたほどの機能はせず、社長自身の負担も軽減されていないと。

このようなケースは、企業が成長するうえで必ず通る道です。技術者が管理職となって機能しない理由は以下が挙げられます。

仕事の目標設定ができていない

属人的な仕事のやり方を今までしてきたために、部下の業務の進め方が分かっていません。目標を定め、タスクを切り、進捗を確認する、このような当たり前のことができていないのです。

部下の動きが見えないので、見えないものを管理者は管理することはできません。

基準がない、つくれない

仕事のやり方やそのポジションの役目など、何の基準も社内にはありません。そのため、その基準をつくるところから始めないといけないこともあります。

部下からしても何の基準もなければ、どのように動き、どのように相談すればよいのか分かりません。すべてがルールづくりなのです。

しかし、昨日まで自分と同じ立場の社員や、下手したら自分よりも年上や入社の早い人もいます。こんな状態で彼らが指示して聞いてくれる人はいません。

しっかりとした会社の考えや、やり方を決めて、会社の方針から外れることは指導することです。すべての原因は、仕組みや組織化の問題なのです。

管理職の役目がわからない

昨日まで、いち技術者だった人が、長くやって来たという理由で、管理職にあげられました。その場合、管理職の役目も分かっていないし、その苦労も引き受ける心構えもありません。

自分の役目がわかっていなければ、どんなポジションでも動くことはできません。新規採用した人に「自分で考えて働いて成果を出して」という状態と同じです。

また、管理職の役目は“管理”することではありません。

ドラッカーは、マネジメントの本質を、以下のように述べています。

「マネジメントには基本的な仕事が五つある。第一に、ビジョンと目標を設定する。第二に、組織する。第三に、チームをつくる。そのために動機づけ、コミュニケーションをはかる。第四に、(成果を検証し)評価する。第五に、自らを含めて人材を育成する。」

「マネジメント」より

この中では、指示より対話を重視することも記しています。

つまり、メンバーや部下個々人の「強み」「特有の資質」を見つけ、認めることから始めることです。「君の最大の強みは、こういうところだね」と伝えることから始めるのです。そうすれば、強みが注目されて、主体的・創造的に、弱みに注目してしまえば、他責的・受動的になるのが人間の性質です。

マネジメントとは機械ではなく、人間にかかわるものです。だからこそ、人間の持つ強みを発揮させることが何より大切です。また、個々人のレベルでは「弱み」であっても、組織やチームになると、その「弱み」自体が無意味になることがあります。ある人の弱みが、別の人の強みで補われるのが、健全な組織だからです。