よく質問を受けるのが、「I企業で開発した製品を特許化できたのはなぜか」です。
この特許は現時点で日本、アメリカ、ロシア、フィリピンで権利化し、その技術を使い海外展開しています。
このブログで書くのは、権利化のテクニック的な内容ではなく、技術の本質的な考え方になります。
権利化のテクニック的なものは色々ありますが、そのテクニックを使うにしてもその本質を理解していなければ技術を特許化する意味がありません。
日本は、これから東南アジアの中でも一歩先に高齢化に進んでいきます。それは東南アジアでいずれ直面する課題です。日本の強さである技術力で課題解決をすることができれば、それは東南アジアに将来輸出できる基幹産業になる可能性があります。
そのような意味でも、技術を特許化する方法を知るのではなく、その技術の考え方を知ってほしいと思います。
技術を特許化することより、技術をどう使うかが大切
日本ではイノベーションを技術革新と捉え、企業が膨大な投資と長年かけて技術革新を興そうとしてきました。
そこには「いままでなかった技術やモノ」という固定的な概念があるように思います。そこに日本の根本的な課題があります。
冒頭の開発し特許化した製品も、既存技術の組み合わせですが、開発した当初は否定的な意見もありました。つまり既存の技術を組み合わせて新しいモノを生み出すということに対して否定的なのが日本です。
例えばiphoneなどのスマートフォンは、既存の技術の組み合わせであったということはよく知られていますし、さらに当初は懐疑的な声が挙がっていました。
このような例は挙げれば切がないほどです。大切なのは、枯れた技術の組み合わせでコストメリットを最大化して、新しいコトを生み出すことです。
新しいコトには「コンセプト」が大切
拙著「教科書を超えた技術経営/日本経済新聞出版社」の中で、社会の多くの人々と共有できる問題を解決することが大切であると書きました。
この社会の多くの人々と共有できる問題とは、人の本質的な欲求をきちんと反映したニーズです。そうした人の本質的な欲求、しかも社会の中でうまれてくる欲求をきちんと想像できるためには、人と社会について深い理解が必要になります。
それが誰もがその製品を理解できるコンセプトになります。
例えば、将来的には高齢化によって生じる認知能力の低下があったとしても身体サポート技術によってモノは運べるようになるし、身体が動かせなくなっても遠隔ロボット技術で操縦はできるようになるでしょう。
テクノロジーを用いながら、社会にどうやって取り込んでいくかという点こそが、私たちが取り組んでいかなければならないコンセプトになります。
また、人々の本質的な欲求を理解し、その欲求にコンセプトがアピールできるものでなくてはならないし、そのコンセプトを実現するためには、あらゆる技術シーズのポテンシャルをも深く理解しなければなりません。
新しいテクノロジーも、コンセプトの上にいかに適合できるかによってその水準が決まってきます。
目の前の課題が見えますか
私たちは社会のどの問題を解決し、どのように事業化し、どのように収益化して社会に貢献していくべきか、ここを考えることが必要です。
しかし、成熟した社会では、あらゆるサービスが社会に浸透し、今使えるものを使って今すぐ目の前の課題を解決するということが無くなりつつあります。
このような中で最も重要なのは、今すぐに手に入るテクノロジーをどれだけ素早くつなぎ合わせて、現場に適応させていくか、そのテクノロジーを現場にどのように導入していくかを考えることです。
今すぐ手に入るテクノロジー、つまり枯れた技術をどのように適応すれば社会の問題を解決できるのかを考えることです。
発見できていない課題を探し、今あるテクノロジーを複合的に組み合わせながら解決することで、社会に包含していくという本質的な考え方をまず持つべきです。