経営者の多くは、独自の勘で儲かるビジネスを発見して、その類まれなる行動力でビジネスを成功させていきます。しかしその勘で判断したことがはずれることもあります。
それ故、「勘と経験で成功して、勘と経験で失敗する」とよく言われます。だから勘に頼るよりは、論理的に考えるべきというのも分かります。
しかし、論理では説明できない勘、ひらめき、思いつきにしか見えない意思決定や行動によって成功する経営者が多いのも事実です。
もちろん、その成功は徹底的に分析し尽くした上で実行に移したわけではないでしょう。多くの成功した事業は、気がついたら論理的にも成功する事業へ変身していたというのが正しいです。
別の言い方をすれば、勘や経験から気づいたこと、ひらめいたこと、感じたことを後からきちんと理屈づけたということです。
理屈づけのためのデータ
経営者からすれば、その勘や経験をデータで裏付けができれば、より事業の成功は高くなると考えるのは当然なことです。
そのような意味で、私たちのような外部人材を使えば、その勘や経験からくるビジネスの「相関関係」をデータから見つけ、それを実際に試して「因果関係」の近いところまで辿り着くことができます。
なぜ実際に試さないといけないのか。それは「相関関係」は実際のビジネスでは区別しづらいものだからです。
例えば、ホームページの訪問者数がUPし、資料請求がUP、そして売上がUPする。このように資料請求に対して売上が伸びている「相関関係」は比較的に分かりやすいものです。
これはAが起きれば、Bが起きるという「因果関係」に近いものです(A→B、A←Bの逆因果もある)。
一方で、暑ければプールの入場者数は増える(C→A)、またアイスが良く売れる(C→B)。この関係に対して、アイスが良く売れたらプールの入場者数は増えるかというと、それはたまたま気温が高いという「共通の要因」で起きていることで、直接的な関係はないかもしれません。
このように原因と結果という「因果関係」が知りたいのに、「相関関係」しか分からないことがビジネスでは多くあります。
だから、「相関関係」を見つけて、それを試してみて同じ結果になれば「因果関係」は証明されていないけど「因果関係」に近い事象が起きていると理解することはできます。
ただし、これらを外部人材を使わずに内部人材で行う場合には注意点があります。
やはり内部人材では、経営者に雇用されているということもあり、経営者の勘や思い付きを否定することができず、それらに寄せる、それらが正しい答えになるようにデータにお化粧することが多く見られます。
その経営者への報告書という名のチラシづくり(皮肉を込めて)に明け暮れて、部門が疲弊していく例を多く見ました。
逆に、そのようなお化粧されたチラシからは、まともな経営判断が出来ず、さらに辞めることも出来ずに赤字を垂れ流し続けることになります。
私たちの場合は、まずはデータを見ずに、その勘や思い付きに関係するデータをブレストして洗い出し、一番関係の強いデータ順並べて、その客観的なデータを使って主観的な議論をすることで、より勘や経験を現実的なビジネスに裏付けることが可能になります。
イノベーションをどのようにつくるのか
経営者の勘や経験、現場での人間観察からのモノごとと、そしてデータからくるバリュエーションを、どのように有機的に結合できるかによってイノベーションの可否が決まると思います。
また経営者だけでなく、データから分かること、そこからは分からないユーザー視点なことをいかに、組織の中の違う人たちが、いかにワンチームで動けるレベルまで密度濃く共有できるかも大切です。
客観的なデータを使いながら主観的な議論をすること、さらには現場に立ちビジュアルとして記憶することで議論の質を上げること。
これらを経営者も含めたワンチームで共有化することで、かつそれぞれの専門性を発揮すればイノベーションは起こりやすくなるはずです。