「ターゲット」ではなく「コアターゲット」でなければいけない理由

「ターゲット」ではなく「コアターゲット」

新規事業開発を依頼される会社の多くは、自社や事業PRの内容でさえ明確でないことがほとんどです。

そのため、まずはこの質問に答えて頂くようにしています。

『お客様に強くお薦めできる商品(サービス)は何ですか?』

しかし、多くの会社は自信を持って答えられません。

だからこそ、新規事業開発やマーケティングをしながら、顧客の声を聞き、その中から大きく展開できる事業の芽を探すのです。

この展開できるものを見つけられた時に、会社は大きく発展します。そして、次のようなことばを掲げることができます。

『当社は、○○(サービス・技術)で、○○(顧客)の○○(課題)を、解決して ○○(顧客が得る成果)を実現します。』

これらをつくる手順は概ね次のようになります。

  • ①自社の代名詞とも呼べる商品・サービスをひとつ開発する(「何を」コンセプト)
  • ②それを、どんどん売り、市場の反応を見る(「誰に」ターゲット)
  • ③そして、改善を繰り返し、ノウハウを積み上げる
  • ④広告をガンガン打って、その一つの評判を市場に浸透させる
  • ⑤ノウハウと認知度で、他社を圧倒する

この①②のために顧客の課題とベネフィットを明確にすることが求められます。

すなわち、「誰に」「何を」提供するのか、特に「ターゲット」を明確に、といわれています。

しかし、この「誰に」をしっかり考えると意外に難しいと思います。

「ターゲット」ではなく「コアターゲット」でなければいけない理由

例えば、マンション販売のターゲットは「都心部の30代共働きの夫婦」、コンセプトは「ラグジュアリー仕様で、ゆっくりとした夜を過ごす空間」を提供とします。

ここから何が想像できますか?当たり障りのないことばを並べているだけにしかなっていません。経営者の多くは、自分のイメージをしっかりと「ことば」に落とし込むことをしていません。

文章にすることは、自分の考えを検証する意味でも、他人への説明にも必要になります。

ターゲットは「都心部の30代共働きの夫婦」、こんな雑なターゲットはありません。仮に同じ年代でも、見ているTVも違うし、読んでいる雑誌や本も違う。

つまり、属性だけだとそれはただのデータにしかなっていません。よく使われるのはターゲットがどんな雑誌などを読んでいるか。このやり方である程度は絞ることができます。

結局、ターゲットを考えることは、主人公のパーソナリティを考える作業です。それが「コアターゲット」になります。

その主人公のストーリーを考え、その商品・サービスを買う理由だけでなく、どんな街のどんな部屋に住んでいて、どんな家具を揃え、どんなランチを食べていて、服はどこで買うのかなどまで具体的に考える必要があります。

大切なのは、自分とは別のパーソナリティをつくって、客体化した“世界観”をつくることです。よくあるのが、ターゲット=自分となっていて、自分の好みのモノを考えてしまう場合、それは単に好き嫌いの話になってしまいます。

主人公の人物像をはっきりさせれば、この商品・サービスを使ってくれる人がどんな顔で喜んでくれているかまで、かなり具体的な映像でイメージしているはずです。

そのお客様に対して、我々が提供する価値(コンセプト)はマッチしているかが次の考えることです。

ここまでの話は「ペルソナ設定」といわれるもので、今までのように「層」として捉え切れないその人の行動や性格、価値観等まで含んだ具体的なターゲット設定をするためのマーケティングの手法になります。

なぜ、コアターゲットを設定しないといけないのか。そこには主なメリットが2つあります。

  • ①その人の状況、心境などを具体的にイメージすることができるので、その商品・サービスの売り方や開発に工夫ができる
  • ②「都心部の30代共働きの夫婦」などの設定があったとしても、どうしても各個人の経験などによりターゲット像の認識にズレがあります。全員の共通の知人のような感覚があれば、そのズレを防ぐことができます。

特に②は、新規事業開発で迷ったときにその原点に立ち返ることができるし、事業をつくるためには人と共有するためのストーリーが必要になります。

つまり、何をするにしても、チームでそのストーリーを共有できることが大切になります。

ストーリーのつくり方

このストーリーのつくり方には2つの方法があります。一つは自分でストーリーをつくって、それを展開していくパターン。もう一つは、すでにあるストーリーの世界観を借りてつくるという方法です。

このストーリーが世界観を表現するので、どんな商品・サービスでも、どんな世界観にしたいかを徹底的に考えることがスタートになります。言い換えれば、ブランディングとは世界観をつくることです。

例えば、スターバックスコーヒーは、ある意味で世界観だけで勝負して世界中に広まっていきました。この展開の中で全くTVCMや駅の広告ポスターというビジュアルがなかったことが驚きです。

有名タレントがスタバのコーヒーを飲むみたいなCMもないし、ユーザー像を強制的に押し付けるようなコミュニケーションは一切とっていません。

このように新規事業開発で必要なのは、こうだったらいいなと思う情景を、はっきり具体的にイメージすること。「意味のある」モノをこの世の中に生み出すこと。その実現のための世界観を圧倒的な精度でつくりあげること。そして、それを共感してくれる人を増やすこと、です。

チームに必要な世界観

経営者が世界観をつくる作業は、多くの人が同じ想いを共有し、同じイメージを描いて、意味をつくり続けるために必要です。

どんな世界観をスタッフ皆で統一していき、どんなブランドを目指すのか、その世界観を突き詰めてから、実務面でのアウトプットをチームで細部を積み上げていきます。そのような想いに共感する人たちが集まる組織には信頼や情熱があります。

大きく価値観が変化している世の中で、どのようなストーリーを持てば生き残ることができるのか。

生き残るだけでなく、ある世界観を持って、どのように輝くことができるのか。それは経営者とチームが共感できるかにかかっています。