仕組化(マニュアル化)の勘違い(前回のブログの続き)

consulting

仕組化(マニュアル化)の本質は、必要のないコミュニケーションを減らして業務効率をアップさせつつ、人がなすべき業務に集中すること。

そのために、組織にはマニュアルが必要になるし、そのマニュアルがあるからこそ協力し合うことができる。その効果は「見える化」「標準化」「共有化」「効率化」「ノウハウ化」「即戦力化」。

「見える化」によって、手順、考え方、ノウハウが分かる。「標準化」によって、サービスレベルが初めて決まり、その標準としたものを「共有化」することで、誰もが決まったことをその通りできるようになる。

そして、「効率化」のために、それらを定期的に見直して、自社の標準としていく。さらにそれらが「ノウハウ」として蓄積することで、スタッフが入れ替わっても会社の財産として残る。そのことで、スタッフを採用しても「即戦力化」することができる。

これが、マニュアルによる効果で、このサイクルをつくるためにマニュアルが必要になる。よくマニュアルをつくって欲しいと依頼を受けるが、これらのサイクルを十分に理解していなければ、絵に描いた餠になる。どちらかといえば、マニュアルを導入するのではなく、マニュアルという仕組を導入するのに近い。

口頭で伝えるのはNG

中小零細の社長さんの多くは、口頭での指示がほとんど。そして、その指示の伝わらなさに苛立ち、一方でスタッフもその指示の意図が分からないまま、進めてしまう。以心伝心、阿吽の呼吸など非科学的な経営方針でも事業拡大できる社長さんもいるから仕方がない。

しかし、スタッフを雇い、事業を大きくするためには、仕組化(マニュアル化)しなければ、いずれどちらかが破綻するのは目に見えている。

口頭ベースのコミュニケーションから、文書ベースへと変えなければならない。その理由は、社長もスタッフも同じ言葉でも捉え方が異なり、その言葉の正解を言葉以外に求めるから。

特に、自社のコンセプトに強みがない場合は、スタッフそれぞれで捉え方が何通りも出てくる。例えば「おもてなし」という言葉でサービスを定義してしまうと、スタッフによってはそのサービスレベルはマチマチになる。なぜなら、人それぞれで経験やイメージは全く異なるし、過度なサービスはお客様に失礼だというスタッフもいるし、徹底的にした方が良いと考えるスタッフもいる。
 
このように、スタッフは自分の都合が良いように受け止め、自分の聞きたいように聞き、自分の好きなように理解するのが当たり前。だから、口頭ベースで伝えたとしても、こちらの意図は正しく伝わらない。

さらに、以心伝心、阿吽の呼吸で社長の表情や行動から、その方向性を探すようになる。つまり社長の顔色を伺うようになる。その表情から上手く汲み取れるスタッフが優秀ということになるが、それも長くは続かない。なぜならそんな優秀なスタッフなら、自分で独立して稼ぐようになるから。

さらに厄介なのが、社長の朝令暮改という言葉の「一貫性」のなさ。そもそも口頭ベースで経営してきたものだから、言葉の意味や定義がバラバラで、さらにそれが信念というベースになってしまっているものだから、スタッフにはどうすることもできない。スタッフからすれば、単なる思いつきにしか思えず、まずます催促からすれば良いという風になる。

コミュニケーションのトレードオフも忘れずに

ここまでは社長とスタッフの関係性についてだが、一方でコミュニケーションの作法として考えなければいけないことがある。それは「摩擦回避タイプ」なのか「生産性重視タイプ」なのか。

前者は、何事も意見をすり合わせることにコミュニケーションの価値を置き、後者は、その通りのままで、主張を明確にすることで効率化を図るタイプ。この違いが必要のないコミュニケーションを生む結果になる。

例えば、前者から後者を見れば、ものをはっきり言う分、不快に感じるし、その逆では、何が言いたいのか分からないとなる。

重要なのは、この違いを組織として、個人として理解できているかどうか。最近は大手から中小へ、その逆もあり、それぞれの組織文化で当たり前と思っていたことが、別の会社では非常識なんてこともありうる。

そのためにも、仕組化(マニュアル化)することで、必要のないコミュニケーションが削減できるはず。

仕組化によって合わないスタッフは辞めていく

仕組化(マニュアル化)することで、人を短期間に育て、即戦力にできる一方で、それは人を振るい落とす仕組にもなる。

そのマニュアルに沿って仕事をできないのなら、辞めてもらう必要があるし、より管理職に近い立場になればなるほど、そのマニュアルも高度になり、業務改善やマネジメントできるかどうかの評価も明らかになる。

会社にとって、人を育てるとは、人を適切に選別することを意味する。つまり人を育てることができない会社は、人を適切に選別することができないので、窓際族、働かないおじさんを生み出すこともありうる。

採用する仕組、人を育てる仕組、管理者を機能させる仕組など、様々な仕組をつくらなければ、なぜやるのか、なにをするのか、どうやってやるのかが明確になっていないため、人を活かすことも、成長させることもできないことを肝に命じてほしい。

タイトルとURLをコピーしました