昨日、日経に「ウーバーに乗らない経営者」という記事が掲載されていました。
記事では、 ウーバーや自動運転などのテクノロジーによる変革が進む中で、今後の自動車産業としてのあり方を話し合う場が設けられ、経済産業省と日本自動車メーカートップが集まったが、誰一人として実際にウーバーに乗った経営者がいなかったとのことです。
このようなテクノロジーによる変革が自分たちの事業にどのような影響を及ぼすのかを理解せず、実体験を通じた肌感覚を持たずに、産業全体のあり方を話し合うこと自体がナンセンスであり、結果として間違ったデジタル投資などに繋がっているといいます。
その他にも、欧米諸国に比べて、大企業がスタートアップ買収をする事例が少ないことが指摘されており、それは肌感覚のないトップとそれにぶら下がる同じく肌感覚を持たない社内官僚(部下)が、業績推移、市場規模といった表層的な数字でのみ事業性を判断し、事業が上手くいかなかった時の責任回避のために投資を見送るケースが後を絶たないそうです。
日本のトップは現場主義で工場にはよく訪問しますが、むしろ現場ではなく、市場の体感が必要ではないのか、と記事は締め括っています。
市場の変革を体感する
肌感覚のない人材にならないためには、マーケット感覚を身に付けることがますます重要になっています。
一方で、企業内部では役職者が年々中身のない薄っぺらい提案が多くなってきていることを危惧する方もいらっしゃいます。
過去、叩き上げで自分の力でモノやサービスを売ってきた経営者の肌感覚があってこそ、事業を成長させてきた中で、その事業パーツの一部分だけを担ってきた従業員すべてにその肌感覚を求めることは難しいかもしれません。
また、コロナ禍では新規事業を提案するにしても、まずネットで調べることが前提になり、出張制限により気楽に現場へ出向くことや、人と会うことができない現状もあります。
そんな中で、東南アジアで仕事をする機会があり、このマーケット感覚を持つ人が多いのが「華僑」と呼ばれる人たちです。
マーケット感覚に優れた華僑
東南アジアでビジネスを展開するときに、華僑のネットワークの凄さを感じることが多くあると思います。華僑は、中国から海外へと移り住んだ子孫や末裔のこと、または中国国籍を持ちながら中国以外で暮らす人を指します。
彼らのマーケット感覚は非常に優れていると言われ、ユダヤ人と同じように、ビジネスで成功したければ彼らに学ぶべきという教えがあるほどで、日本の著名な経営者が彼らの考え方に影響を受けています。
華僑のビジネスは、三縁(血縁・地縁・業縁)を基礎として、広範囲なネットワークを持ち、迅速な意思決定が特徴的です。日系企業が本社に持ち帰って検討しますと言っている間に、あっと言う間に案件を取られるなんてことが頻繁にあります。
さらに彼らは、そのネットワークをフル活用して、資金、情報、技術、ノウハウをすぐに揃えることができ、起業だけでなくその後の事業展開及び多角化、海外展開もスムーズに行うことができます。
マーケット感覚を身に付けるという意味では、モノやサービスの試行錯誤の回数が飛び抜けて多いです。実際に市場での反応を見ることで、売れるか売れないかの勘が研ぎ澄まされている印象があります。
実際、華僑と話しをすると、これを一緒に日本で売らないかとか、このビジネスを手伝わないかとか、商売に貪欲な一面を見る機会が多くあります。
さらに、不思議なことにいつでもアポイントが簡単に取れてしまいます。その背景には、いつおいしいビジネスが飛び込んで来てもチャンスを逃さないための処世術と言われています。
彼らは、世界中に同じようなビジネスを考え、自分の代わりになる人材が山のようにいると考えています。だからこそ、すぐに相談に乗り、すぐできますと言えることが成功につながると信じています。
少し話が逸れましたが、実際にモノやサービスを売ってみて、市場の反応を観察する過程の中で、その肌感覚が研ぎ澄まされていくことは間違いのないことでしょう。