『教科書を超えた技術経営』日本経済新聞出版社の中では、美しいデザイン、コンセプト、テクノロジーの3つが大切であり、どれも欠けてはならない重要な要素だと書きました。
人や社会を巻きこんだイノベーションには、美しいデザインが必要です。なぜなら、美しいデザインは、視覚的な「かたち」として感性に訴え、可能性を目に見える「かたち」として伝えることができ、人々が感動するからです。
シンプルに言えば、美しいデザインが、テクノロジーを一番使いやすい「かたち」で伝えることができるからです。
また、コンセプトもイノベーションに重要な要素です。なぜなら、コンセプトがあるからこそ、テクノロジーを自然に暮らしの中に取り入れることができるからです。
コンセプトは、なにを、どのようにデザインするかという指針のために必要なものです。そのためには、人々の生活の中に潜むコンセプトを発見しなければなりません。そのコンセプトは、問題の発端を社会の側に置いているので、誰もがそれを理解できるものです。
抽象的な表現が多いので具体例で説明しましょう。
iPhoneがスマートホームになる
アップルWWDC2016の中で非常に大きな可能性をもったコンセプト「 Home 」というアプリが発表されました。これは家電メーカーなどと組み、家の照明、ガレージ、エアコン、冷蔵庫、お風呂、エアコンなどをiPhoneで集中管理をしようという試みです。
このHOMEアプリにIoT家電を登録して、1つのアプリで全て家電を操作できるリモコンのような使い方ができます。
また、このアプリには、ホームオートメーションという機能があり、決まった時間やセンサー、もしくは位置情報などを利用したトリガー(通知)を使って、家電同士を連携させることができます。
例えば室内温度が20度になったらエアコンオン、家に誰もいなくなったら照明オフなど。
あまり進展は見られないのですが、特に残念なのは、スティーブジョブス亡き後、彼のように情熱を持ってハードウエアとの連携を日常生活の中でどのように使用するか見せて、一般消費者に魅せる(イメージを伝える)ことが弱くなっている点です。
しかしながら、アップルの強さとは、テクノロジーを普通の人にもわかりやすく伝え、そして、顧客が驚き、感動する(生活を変える)かたちで届けられることだと思っています。