前々回のブログでは、「お客様の声」の大切さを記した。
抜粋すれば、プロ目線で商品・サービスを考えて、次第にお客様と同じ目線で考えられなくなっていくことを避けるために、以下の質問に答えられましょうということ。
- お客様はどんな悩みや希望があって、あなたのサービスを買おうと思うか?
- お客様は施術前にどんな不安をもっているか?
- お客様は類似商品(競合サービス)と比べてどこが良くて選んでくれている?
- お客はあなたのサービスを受けることでどんなメリットがあるか?
実はこの質問に答えられるということは、「お客様目線」を持っているだけではなく、経営者の「想い」を表していることに繋がる。なぜかを考えてみる。
お客様目線はそのままお店の「想い」になる
この質問のベースになっているのは、お客様の気持ち(悩み、欲求、不安など)をよく理解し、それをしっかり伝えられているかということ。
昔の商店街の八百屋さん、魚屋さんは接客の中で自然にお客様の気持ちを拾い集め、その情報をごく自然に販促活動に活かしていた。
この質問にあるように「お客様が何を求めているのか」「自社の強みは何か」を常に把握することが大切。
自分たちのお客様の悩みや欲求を理解していないということは、別の言い方をすれば、自社の強み、つまり何を伝えればよいか分かっていないことになる。
さらに、この質問はお客様目線の順番、つまりお客様のサービスの購買プロセスになっている。さらにお客様の心が購買行動によってどのように変化していくのかという心理プロセス(お客様の購買パターン)そのものになっている。
これを詳しく考えてみる。
1.お客様はどんな悩みや希望があって、あなたのサービスを買おうと思うか? ⇒欲求発生:お客様に何らかの悩みや欲求がなければ、どんなに良いサービスも購入しないはず。その悩みなどがあってこそ、サービスの購入へと行動を始める。 |
2.お客様は施術前にどんな不安をもっているか? ⇒購入不安:価格が高かったり、効果が分かりにくいものであれば、サービス購入時に様々な不安が生じる。他にも初めて行くお店の不安、サービス内容の不安など、これらの不安を取り除いてあげることが必要。 |
3.お客様は類似商品(競合サービス)と比べてどこが良くて買ってくれている? ⇒購入実行:いろんな情報から、不安を克服した結果、購入を決断。あたり前ですが、購入するのだから、購入に値するものであること。そこで重要なのが、他社とのサービスの違い。これが決断につながる。 |
4.お客はあなたのサービスを受けることでどんなメリットがあるか? ⇒購入評価:必ずお客様は購入したものを後悔したくないため、サービスを改めて調べて満足感を得ようとする(認知的不協和を避ける心理)。 |
なんらかのお客様の持つ感想に対して、満足感をもってもらうことで、お店のリピーターになる。
このようなお客様の心理段階を考えることが、それが経営者の「想い」になる。
経営者の「想い」=理念で独自のスタイルを
開業するにあたって深く考えなければいけないことは、“この美容サロンは、”誰に”、”何を”するための美容サロンなのか”。
世の中には多くの美容サロンがあり、美容を提供するという共通の部分はあるが、どんなお客様を対象としているのか、美容サロンとしてどんな結果を得たいのか、そのためにどのような設備や人員が必要なのかはそれぞれの美容サロンで異なる。
例えば、ある美容サロンの理念は、
「〇〇を訪れた人に、独自技術を通じて“美肌”を提供する」というもの。
このお店は地元密着で展開しており、“誰に”は、「地元を中心とした美容サロンを訪れた地域の働く女性」で、 “何を”は、「その働く女性とって必要とされる、美肌につながる施術」。
もう少し深く「誰に」を考えることは、別のブログで書いたように「ターゲット」は「コアターゲット」とすることは言うまでもないこと。
ここから事業が大きくなれば、さらに「想い」=理念が必要になる。
例えば、POLAの創業の想いは、「最上のものを一人ひとりにあったお手入れとともに直接お手渡ししたい」から。~創業者・鈴木忍のことばより~
現在のPOLAの経営理念は「Science. Art. Love.」と抽象度が高くなっている。
私たちは、美と健康を願う人々および社会の永続的幸福を実現します。 Science 科学的探究心と挑戦で、革新を生む。 Art 卓越した美と技で、驚きと感動を生む。 Love 一人ひとりの人間を尊重し、愛あふれる関係を築く。 ~省略~ すべての力をもって、一人ひとりの女性へ。今までにない美をつくろう。喜びをとどけよう。私たちの、POLAの、約束。 |
“誰に”は、「母、働く姉、お化粧を始めたばかりの娘」、“何を”は、「科学的探究心と挑戦(卓越した美と技)で、革新的な商品で驚きと感動を生む」こと。
この理念をもとに、「人を美しくする、という仕事は美しい。」と締めくくっている。
この「想い」は、「お店がどうありたいのか」という理念があってのもの。
この理念に基づいて、自分の美容サロンを自分がやりたいスタイルにしていくことが、楽しみながら長く続けるためにとても重要だと思う。
皆で共有することが大事
この理念を明確にすることは、自分のモチベーションを維持していくために有効だが、将来雇うことになるスタッフ、さらにはお客様にとっても大きなメッセージになる。
例えば、新しいスタッフを雇用するために面接をする。その時に「うちはこんな美容サロンです」「うちの美容サロンではこういうことを大切にしています」ときちんと伝えることができれば、「うちではこういうことを大切にしているから、それを踏まえて取り組んでね」となり、新しいスタッフの行動指針になっていく。
経営者にとっても、つねに理念を意識し、優先順位を考える機会を設けることで、自分自身もスタッフに対して一貫した態度で接することができるし、スタッフ同士も個人的な判断を越えた会社の優先順位を意識できるようになる。
お客様にとっても「他社との違い」がはっきりと出る部分だし、究極的にはお店のファンになってくれる。
さらにスタッフ間でも共有し、伝えられていくようになれば、いずれは美容サロンの文化になる。
創業の「想い」なんて始めは必要ないという方もいるが、これら考えれば「お客様目線」から「お店の強み」、「コンセプト」、さらには「理念」までを考える上で必要になることだと思う。
ご参考に。