美容サロン系は、そもそもサービス業だから、物を売る商売とは異なる。つまり、商品にお客様がつくのではなく、人にお客様がついている。
そう考えると、場所がどこであるかよりも、重要なのは「誰に」してもらうかだし、その人がいるからお店に行きたいと思うはず。
だから、固定客をつかまえて独立していく人が後を絶たないし、人と人の関係で成り立つ商売なので立地は問わないはず。
例えば美容院、コンビニの4倍以上あるといわれており、都内では隣り合うビルにあったりする。こんなにたくさん美容院があっても、固定客が掴めているから成り立つ業種。
だから本当に、クライアントの言うように恵比寿・中目黒・代官山に出店してやっていけるのか?
この前、紹介を受けたマンション店舗は、部屋の隣が美容サロンだった。これからもどんどんお店がオープンするだろうし、競争相手に勝っていくことはできるか?
やっぱり、立地は将来どのようにしたいのか、しっかりビジョンも持って決めるべきだと思う。例えば地元に愛される家庭的な美容サロンにしたいのか、確かな技術のもと、都市一帯のエリアに複数店をオープンさせていくのか。それともお客様のことを考えて、利用しやすいところにお店を出すのか。
漠然と開業したいでは、その先の選択肢はいくつでもあるし、まずはどうしたいのかを明らかにしてほしい。自分が相手にしたいお客様はどこにいるのかによって、立地は全く変わってくる。
クライアントから聞いているのは、お客様のことを考えて利用しやすいところにお店を出したいだけ。
この利用しやすいが結構くせもの。何を持って利用しやすいというのか。だから、少し大手チェーンのやり方を調べてみた。
立地は本当に大切ですか?
乗降客数の選び方
立地を判断する時に最も分かりやすい基準が駅の乗降客数。だから前回のブログで、恵比寿・中目黒・代官山の乗降客数を調べた。
- 恵比寿 地下鉄11万8千人、JR14万6千人
- 中目黒 地下鉄23万人、東急19万7千人
- 代官山 東急3万1千人
大手チェーンがその駅前に出店するか否かを検討する際のひとつの分岐点は、乗降客数5万人以上の駅と、10万人以上の駅。
普通に考えれば乗降客数が多い駅に出店することを考えるが、同じようなことを考える人がたくさんいるので競合も増える。
例えば、5万人に1店舗か40万人が乗降するけど、競合が5店舗ある場合はどちらがよいか?
一見、独り占めできる5万人に1店舗のほうがよいと思うかもしれないが、大手の出店戦略は、それでも40万人を選ぶ。
なぜなら、40万人を5店舗で割れば、8万人。競合しても8万人が見込めると判断するのが大手のやり方。
ただし、大手チェーンは5万人以下の駅ではあまり儲からないと判断して、出店を避ける傾向がある。また、どちらにせよ駅前は賃料が高いので、駅から離れた商圏で売上が上がるかどうか注視するべき。
街のイメージの怖さ
代官山にお洒落なイメージを持っている方も多い。でも通りによってそのイメージは全然違う。行って歩いてみればすぐわかる。
土地はイメージがどうしても先行しがち、でも実際を知るためには土地勘があってもなくても、データと一次情報(歩きまわって手に入れる)のつき合わせをするべき。
例えば東京23区で年収ランキング1位は高層マンションが建ち並ぶ港区。港区といえば、麻布、白金、青山など、洗練されたおしゃれな街が多い。

でも年収が高いのは一部の人達で、多くの人たちの年収は他の区と比べても変わらないはず。
一方で人口を見ると港区は約26万人、最も多いのは世田谷区で約94万人。どっちに出店した方が良いかは明らかに世田谷区。
地域 | 人口(人) | 人口密度(1km2あたり) | 世帯数(世帯) |
港区 | 261,302 | 12,828 | 140,324 |
千代田区 | 66,416 | 5,696 | 37,867 |
渋谷区 | 236,033 | 15,621 | 143,654 |
中央区 | 169,062 | 16,558 | 93,460 |
目黒区 | 288,849 | 19,690 | 154,047 |
新宿区 | 348,806 | 19,144 | 217,029 |
品川区 | 414,911 | 18,166 | 231,190 |
世田谷区 | 943,169 | 16,248 | 493,655 |
この逆で、年収ランキングの最下位は足立区。でも人口は約68万人。実際、足立区に出店すると単価の高いサービスでも繁盛店になる店が多い。
ブランディングを考えれば港区という選択もあるが、やはり自分がどのようなお店を目指しているのか、富裕層向けのお店なのかよく考えてみるべき。
セオリーは何よりも人の量。いくら年収が高くても、人口が少なければ、お店に来る人の数は限られる。絶対的に人口の多いところに狙いを定めるのが定石。
この人口量とそこに住む世帯が使うお金の量から「市場規模が大きい」という判断ができる。よく使うのが国勢調査の結果、ここから何万人が住んでいて、収入のどのくらいが何に使われているのか知ることができる。
参考までに。